詩『ファミリーカー』

襟付きのシャツを着た男が

女と子どもが遊ぶ庭に出てきた

 

眠いはずなのに

遅れを取り戻すように

妻子がただそこにいるということに

驚いて見せる

喜んで見せる

 

いい天気ね

お日さま!

そうだな、どこか出かけようか

 

いつからお前はそんなに察しが良くなった?

提案なんて

一番嫌っていたじゃないか

誰かのためになることは

無駄だと言っていたじゃないか

察したときも

知らん顔をして無理にでも違うことを考えていただろう

 

動物園がいい!

いいわね、お弁当作ろうかしら

やったー!

 

何を黙っている?

お前が連れて行くんだぞ?

せめて意見しろ

いや、言葉にしなくてもいい

今すぐハンドルを握り

お前が一番行きたいところに行くんだ

ついてこれないなら

置いていけ

一度も振り返るな

 

あら、どこ行くの?

 

そうだ、そのまま車に乗り

走れ

それがお前だったはずだ

喜ばせておいて

悲しませるんだ

いいぞ、いいぞ……

 

今のうちにガソリン入れてくるよ

 

男はガレージに回り、運転席に乗り込む

エンジンをかけ、その音に耳を澄ませる

パワーウィンドウを下げ

風を感じようとする