2025-01-01から1年間の記事一覧
本体装置から外したギロチンの刃を、専用台に固定する。砥石を掴み、刃先の面に密着させる。角度を維持しながら、前後に行き来させる。中腰の姿勢で、下肢の関節の角度を一定に保つ。右から左へは、すり足によって、高さを変えずに移動する。 ギロチンの刃を…
今までたくさんのことを忘れてきた 忘れるという機能にすがったこともあった 実際に楽になったこともあった 一方で 過去の栄光などというものは未だないにせよ あの頃は良かったと 当時を懐かしみ 励みにしたこともあった そのときにわざわざつらい記憶を鮮…
もう言い訳はできない言い訳をしたところで俺の耳にしか届かない しかし自分の声であっても響けばほんの少し慰められてしまう よくやってるよ仕方ないよ時代だよ… 法廷ではなく脳内であれば誰もが優秀な弁護士になれる優しい陪審員になれる物分かりのいい検…
その耳の聞こえない少女は細い指で俺の手を引き階段を降りた 手をつないでいるのに何度も振り返りながら俺がそこにいることを確め踊り場では足を止めこちらを見て微笑んだ 俺は彼女の耳にかけられた補聴器の存在に気づき「聞こえるの?」と尋ねる 途端少女は…
首からぶら下げた鍵でドアを開け母親が書き残した手紙を読みその手紙に書いてある場所からおやつを出し静かな部屋で自分の咀嚼音に耳を澄ませ時間をもて余した末に宿題を引っ張り出し発達途中の脳を精一杯働かせ集中のあまり外からの音も自らの呼吸音も聞こ…
悪い夢が続いても不眠には陥らない就寝時刻が遅れていくだけだ 朝に起きていたのが夜に起きるようになり繰り返していけばまた朝に目が覚める時が来る 悪夢はまた俺に10キロ走の発汗をもたらし筋肉を緊張させ唸り声さえ上げさせる どうやら俺の身体は俺に生き…
耳介を失ったようにあらゆる向きから音が届き距離感は掴めず全体も細部も把握できず コインの落ちた音が雷鳴になるどこかの子の囁きが判決文に聞こえる 振り向いた先には静止した空気と乾いた地平が先の見えぬほど広がっている
瞼が下りず就寝時刻が遅れていく 寝つけば目を覚まさない 光を見る時間は前へ前へとうつろい明日を食っているみたいだ早足なのか遅滞なのか分からなくなってくる しかし覚醒は強く余すことなく力を絞り出せる身体を手に入れた 幸不幸や正不正その確認や判定…
悲しみと共にすべてを失ったような気がしても この身ひとつは残り ものが見えるし 手も足も動く 生きており 生き残った者であり 感謝すべき者でもある だが無限にやり直せるわけではない あと数回 いやきっと これが最後だ 「真実の愛を貫き通せ」 と死んだ…
ある悲しみによって何か人生の教訓のようなものを得ても次に迫った別の悲しみの回避にその教訓が役立つことはなく何度でも何度でも底に落ちる それでも人は反省と教訓を欲しがり時間が過ぎ少し元気が出てきたときには人として成長したなどとよく分からないこ…
こんなことを考えていただから言えなかったできなかった いつもすべてが終わってから言い訳や説明を思いつく なぜかその大切なときには黙り込んでいる半径数メートルの円の中で怯えている そして一人になり恐怖は消えたものの語りかける相手はいない手を伸ば…
世界の大きな変わり目を見たいと 幼い頃からぼんやりと考えていた 影響 刺激 そんな言葉では足りない 太字で年表に書き込まれるような 大事件 気づいた時には 終わっていた 遠くの国で起こったこと 国内で起こったこと 目の前で起こったこと すべて見逃して…
誰も傷つけずに怒らせずに悲しませずに一日が終わりそうだ 時計を前に置きカウントダウンタウンをする時間はなかなか進まず俺は針を指で回そうとして思い留まる 何をしているんだと笑った声が壁に跳ね返る ゆっくりとあたりを見回し時計に視線を戻したときい…
インターフォンが鳴り夢から醒める身体を起こしかけてまた横になる 錯覚だ鳴るはずがないのだ 目を閉じ次に鳴ったら本物だと自分と約束する 約束?違うな 騙して生かそうとしているのだ 俺が俺を
書き終えた時 熱くなり 涙した 出来が良かったのか それは分からない 誇りと情けなさ 喜びと苦しさ 希望と後悔 そんなものがないまぜになり溢れた 簡単ではない しかしこれからも俺はときどき 過去の自分の全力や感動が なんともちっぽけで 青臭いものだった…
遮断する何も発さずできるだけ接することなく 自分にだけ問う自分だけで答える自分だけでする 今さら世間からとり残されることを気にしても仕方あるまい 俺だって孤独を愛しているわけではないしかしどうやら必要になったようだ 前から必要であったがたぶん…
誕生日が終わってから真夜中に食べるローソクのないケーキ 1人になるだろうからと小さめのものを頼んだのにそれでも食べきれず 翌日には少し固くなったスポンジが口の中の水分を吸い俺を吸い しかしコーヒーがあればなんとか食える大丈夫 俺は前を向いてい…
世のすべての人にいいことがあればいいなと思う 真面目な勤め人にも会社経営者にも金持ちにも貧乏人にも男にも女にも子どもにも老人にも善人にも悪人にも人生に希望を持つ者にも諦めた者にも 平等に少しのそれぞれにとってのいいことがあればいいなと思う
眠れば見えず聞こえず触れられず しかし起きていても何も起こらず何もできない
誰も俺を見ていない そのような世界でさえ 俺は生きようとしており 食うこと寝ることが ただ人生を引き延ばすための作業のように思えてくる しかしその作業は純粋であればあるほど 自分の人間らしさを思い出させる 人間らしく生きることへの欲の存在を知らし…
女は去り 仲間は忙しく 静かな夏だった 空だったり 汚い海だったり テーブルの上だったり 何もないところを 長く眺めた 騒がしかった去年の夏の記憶は 今の俺を痛めつけ 思い知らせる 愛する女と一緒になることにも 作家として身を立てることにも 覚悟が足り…
自信の喪失や諦め 泣き言や愚痴 そんなものは 全部あと回しだ どうせ 最期の五分か十分くらいですべて説明できる うすっぺらい内容だ そういう死に方ができるとして だが
小さな失敗 中くらいの失敗 大きな失敗 順番に経験できれば 被害は最小限に 学びは大きくなるけど そんな都合よくいかない あるとき突然 どん底に突き落とされるなんてのは よくある話だ もうこんな想いはしたくないと改めても 取り戻すことはできない たい…
山の高さがもっと低ければ 乗り越えたとき 喜んだろうか 頂が雲の上なら ハナからすっぱり諦めたろうか それとも あとで感動秘話になる程度の そこそこの努力をして 人生の中盤くらいに乗り越えられる そんなちょうどいい山を 探していたか? 明日なのかいつ…
手足を思いのままに動かせるようになってから 誰にも作れないものを 作りたかった 誰もやったことのないことを やってみたかった 認められよう とは思わない 驚かせてやろう と思う 誰かが助言をくれたなら 俺はその助言以上のことをしてみせよう 時間が俺に…
海に行こう 誰もいない 熱々の砂の敷かれた 大きな海 飛び込んで 泳ぎ 魚やクラゲや海藻を見て 疲れたら たった一つのビーチパラソルの下で本を読む のどが渇き 腹が減るだろうから 海の家も置いてしまおう 注文をする前から よく陽に焼けたおじさんが ビー…
自分がこの程度であることを 毎日受け入れる 昨日も今日も 明日も
苦しい時間が続くなら それはチャンスと言える 励ますためのいい加減な話ではない お前がどうなろうが 世間の知ったところではない お前なんかが すいすいと すべてをうまくやれると思っていたか? ずっと昔に 覚悟していたはずだ 今 その覚悟が揺らぐほどの…
苦しいとき まだ体力が残っているなら もがいて戦え 命が何より大切 健康第一 人は幸福を追求すべきである そうでないときがあることは お前も知っているはずだ 何も進んで死のうってわけじゃない 進んで不幸になろうってわけじゃない 自分なりに生きようと …
苦しい時間は 何度も何度もやってくる 俺はそこから抜け出すために 時間が過ぎるのをただじっと待つ 身軽になったら 俺は急いで動きだす 動き続ける 早くしなければならない 動けなくなる前に やらなければならない 早くしなければならない 苦しみにそっぽを…