2011-01-01から1年間の記事一覧

詩『朝』

目覚めたときに まぶしいほどの朝日と青い空があったなら 私は何をした? 栄養たっぷりの朝食を作った? 気持ちのいい散歩をした? 熱いシャワーを浴びた? そんなむなしいことはしない そんなことで 何か変わったりしない そんなことで変わったなら それは…

詩『まえうしろまえ』

もう駄目だと思ったり 絶対大丈夫だと思ったり そんな繰り返しの中で私は どっちが本当の自分か分からない気になるけれど 分からないのはきまって駄目だと思っているときで 大丈夫だと思っているときは 前向きな自分も 後ろ向きな自分も 本当の自分だという…

詩『冬の夜の公園』

冬の夜に家を出て 普段は横を通るだけの 近所の公園に行こうと思い 暗い夜道を歩いた 冬の夜の公園なんて 多分誰もいないだろうと考えながら 誰もいないから行く気になるんだろうと思いながら 歩いた その大きな公園の入り口には 車が止められていて あれ誰…

詩『変わりたい』

変わらなければ と思う私は 昔と変わった自分以外の何かを目の当たりにしていて それで自分だけ変わっていない気がして 変わらなければ なんて思う もう昔のように 背が伸びたり体重が増えたり 逆上がりができるようになったりはしない 目に見える変化は ど…

詩『ポケットに入れて』

疲れ切った体で家に帰り それでもごはんを食べて体をきれいにして 今日やるべきことを全て終わらせて きちんと椅子に腰かけて 私は絶望の整理に取り掛かる 一つ一つ 箱から取り出して 机に並べる 一つ一つ並べてみると 何でこれが絶望なんだと思うものも紛れ…

詩『カラス』

夜中に鳴くカラス 私はその鳴き声で目を覚まし 布団を口の辺りまでひきあげ 不吉だ と思う カラスの方はきっと 何かしらの事情があって 夜中に鳴いて それで不吉だなんて思われて あの大きな 真っ黒の ゴミを漁るカラスは 不吉な要素ばかりのようで 私たちは…

詩『ガラクタ』

貸してあげたガラクタ あんなに喜んでいたのに どうして失くしちゃったの どうしてもと言うから 貸してあげたのに あなただから 貸してあげたのに 失くしちゃった と言う前に あなたがどれだけ探したとしても 家ごとひっくり返して探したとしても 失くしただ…

詩『カン、クル、スン。』

カンカンとアパートの階段をあがり 隣の家からシチューのいいにおいがして クルクル回る換気扇の前で立ち止まった私は いいなあ といいにおいなのに寂しく思う ポーンと鞄をベッドに投げて そのベッドに倒れこもうとしたら鞄が邪魔で 嫌になる それでも鞄を…

詩『一分か二分の優しいおじいさん』

向こうから歩いてきたおじいさんに 道を教えてもらい とても優しかったとき 家族がいて友達がいて 連れ添って何十年の奥さんがいるにおいがしたとき このおじいさんになりたいと思う たまたま機嫌が良かっただけかもしれないけど 道を教えてもらう間の一分か…

詩『誰かの人生』

不平不満をこぼしてばかり そんな私を見かねたあなたは じゃあ生まれてからの理想の人生を書いてみなよ と言う 机の上に差し出された まっしろの紙と 削りたての鉛筆 私は書いた こうだったら良かったのに こうだったら幸せだったのに 削りたての鉛筆は 身を…

詩『あれもこれも』

ハンバーガーが食べたい ビールが飲みたい 海に行きたい セックスがしたい なんてことは すぐ言えるのに 言ったそばから叶えることができるのに 幸せにしてやりたいと思えなくなった とあなたが言ったとき じゃあ私は私で幸せになる と言った私はどうやって…

詩『皮膚』

爪を切ったときに ぽろぽろと床に落ちるように 毛を切ったときに はらはらと床に落ちるように 古くなった皮膚も 目に見えるくらいの大きさで落ちてほしい いっそ 蛇が脱皮するみたいに あるときいっぺんに皮膚を脱ぎたい そしたら私は 大きな声で言う あー皮…

詩『日曜日の夕方』

くたびれた車両の中 くたびれたシートの上 くたびれた私は帰って晩ごはんを作る面倒くささのことを考え その投げやりな思考は 何時間走り回っても疲れ知らずだった幼い頃の思い出を持ってきて 私は無意識に 近くでない景色を求めて窓の外に目をやる 視線の移…

詩『夢』

思い描いていた未来が がらがらと音をたてて崩れ落ち 半分になった 半分以下になった 何日も泣き続けて それからやっと涙を拭って もう一度建て直そうと あちこちから欠片を集めて積み重ね やっと元の高さに戻ったと思ったら それはとても不安定で頼りなく …

詩『友達』

あなたの悲しみ あなたの喪失感 そんなもの 私に分かりっこない だって私 悲しんでないし 失ってないし あなたがもし 自分と同じように 悲しんでよ泣いてよと言うならば 私は悲しいふりだってするし涙も流す けれど私は そんなことを言うあなたと 友達になっ…

詩『手』

「失った」と思ったけど 「失った」ってそもそもなんて傲慢な言葉 飲みこんで消化したわけでもないのに それが自分のものになったと思う人の傲慢な言葉 手に入れるという言葉に 自分の手で 五本の指を使って ものを掴む以外に意味があるなんて 私は信じない …

詩『蛇』

公園で蛇を見たと 馬鹿みたいに興奮して言った私に それはアオダイショウだな と投げつけたあなたは アオダイショウに噛まれてしまえばいい そう思っていたら まあアオダイショウには毒がないからね とあなたは言い 私ばかりでなく 私が公園で見た蛇のことも…

詩『ゆれる』

生きれば生きるほど 話せば話すほど 稼げば稼ぐほど 皮を一枚剥がされるよう かと思うと ペンキを塗られるよう できるだけ上手に生きようとも できるだけ下手に生きようとも できるだけだからできるだけでしかなく 剥がされたり塗られたり 狩りをして生きた…