2012-01-01から1年間の記事一覧

詩『俺たちは靴を履くことで怪我をしやすくなった』

この地球って星で この国 いや たった二人の間でさえ 俺たちは平等か? 形だけの権利と義務が 意志さえをも支配している 何でもかんでも やりたいつもりになってる ほんとはほとんど何もやりたくないはずなのに 理不尽さに屈しなければならないとき 傍観して…

詩『街角を曲がるときにはポケットから手を出しておくこと』

俺はずっと思ってた 俺たちのせいで暴れだした自然が 俺たちを殺すのも 自然と呼べるんじゃないかって 地球が熱くなったって 水面が上昇したって 生き物が絶えたって 地球が爆発したって それも自然と呼べるんじゃないか 人間が今あがいている状態も自然と呼…

詩『ダッキングからの右フック』

何でもかんでも知りたがるくせに ほとんど決着もつけずに生きている 知らん顔して また次のことを知りたがる 知らん顔するなら 最初から知ろうとするなよ この世の全てを知るつもりなのか まさかそうなのか 半径一メートル以内の苦しみや悲しみはちゃんとや…

詩『せめてそのくらい分かって生きていく』

くだらない仕事に従事し 上司からあれやこれや指示され けど最初 そこには優しさらしきものがあった 俺は勘違いした こいつ、いい奴なんじゃないか? けど次第に明らかになってくる くだらない仕事だと思っていたのは俺だけじゃなかった 奴もまた多くの人間…

詩『苦しみがまたがるシーソーの反対側には誰も腰かけないということはない』

なんだかいろんなことがうまくいかないで 苦しいような気がしたら あるいは苦しみを予感して脅えたらな もうその時点で苦しみの領域にしっかり立ってる すごく苦しい 少し苦しい 苦しみはそんなふうに分けられない からっぽの部屋の床に積もる埃のように ど…

詩『世界中の金をかき集めることに人生を賭けた男の話』

静かな夜さえあればいいと思うことがある 腹いっぱいメシが食えればいいと思うことがある 一人の女がそばにいてくれればいいと思うことがある 時間を気にせず眠られればいいと思うことがある 金さえあればいいと思うことがある 俺たちはその場その場で色んな…

詩『背中を押してもらって崖の下』

誰かが言ったその言葉 真に受けるか受けないか 全ては俺に委ねられる ほとんどの人間は 励ましの言葉を求めている 励ましの言葉を与えてくれそうな人に意見を求める それがたとえ諦めの薦めであっても 諦めた方がいいと自分が思っていれば励ましとなる 言葉…

短編小説『そう簡単に新しくは生きられない』

部屋に一つきりの窓からあたたかい風が吹きこみ、クリーム色のカーテンを揺らしている。あたたかい風だった。気温の低い日に吹く冷たい風は、もう吹かなくなっていた。つまり季節は、すっかり春になっていた。 風はときどき、命を繋ぎとめるように急に強さを…

詩『並んだからって必ず順番が回ってくるとは思うなよ』

カゴを持って長い列に並んで 人の列が進んで前の客で手間取って ついに自分の順番が回ってきて パンやら牛乳やら肉やらをもらう代わりに金を渡す度に俺は 何が起きているのか分からなくなる こんなものを手に入れて自分が何をしようとしているのか分からなく…

詩『ショウウインドウに映る俺』

誰とも喋らないのが何日も続くと 生きているということが実感できる 何にもしなくても腹は空く 眠くなるしいらいらもする ああ俺は生きているんだと思う 死の淵から生還したときとは多分ちょっと違う生の実感 まあ死の淵に立ったことなどないが 何にもしなく…

詩『右を向くと左が見えないのにはもううんざりする』

俺たちは色んなことを見ないままに信じてるけど 全部見て回るには命がいくつあっても足りないくらいに この小さな世界でさえ大きすぎる さて俺たちは何を根拠に信じているのか 誰が言ったことなら信じられる? 経験豊富な百戦錬磨? 知識豊富な理論派? 優し…

詩『できれば全てのがらくたを私が発明したかった』

なんのために毎日働いて お金を稼いで食べて家賃を払って トイレットペーパーがなくなったらトイレットペーパーを買って そんなことをしてるんだろうとトイレで考えだすと止まらなくなる 裸の自分 というところから考えてみると 今自分は便座に腰を落ち着け…

詩『机上の餡パン』

言葉にした途端 もう違ってしまっている 愛のうたも怒りのうたも 夢のうたも哀しみのうたも 言葉にした途端 というか目や耳で感じ取って吐きだそうとしたときには 違うものになってしまっている どんなに言葉を重ねても 華麗な比喩を使っても 目の前のそれを…

詩『小説』

小説を読んで 夢中になる ことはあるけれど 結末が気になって というのは嘘だと思う だって結末教えたら怒るだろ 気になるのはいつも一行先 せいぜい一ページ先 俺たちが夢中になってるのは「今」だ 読むという行為の中に小説はあるし時間は進んでいく

詩『もう着くと言っていつも結果、待たせる』

なくてはならないのは希望だ 耐えてばっかりに見える奴だって いつか俺は と思ってるから耐えている というかそいつは多分耐えているとは思ってない 道の途中で苦痛とすれ違ったくらいにしか思っていない 何かを成し遂げるために 血の滲むような努力をして …

短編小説『桜に鳴る』

アパートの前は人でごった返していた。 丘の上までわざわざ朝からやってきて、路上駐車しまくりの道の真ん中で写真を撮りまくりので、短い渋滞が起こっている。バスがクラクションを鳴らしてる。 一年に一度、桜の咲く季節の休日は毎年こんなふう。普段は静…

詩『Working!』

誰でもできるような仕事にばかり従事していると 俺じゃなくてもいいんだよなあ という自虐心さえもだんだんなくなってくる やってやるか とまともな職歴もないのにオファーを受けたような気持ちで働くようになる 食うために仕方なしに仕事には就くけど 仕事…

短編小説『埋もれる』

朝の九時から喫茶サニーの大掃除は始まり、マスターはカウンターの中を、私と福西くんはカウンターの外を拭いたり掃いたりして、近所の定食屋でお昼ご飯を済ませたあとに客席の大きな窓を拭き始めた頃から初雪がちらつき始めた。 「このタイミングで!」 と…

詩『don't try』

このどうしようもない世の中で というか どうしようもないと思える世の中で 何をしようとしているのか 何もしないでいることが一番だ けれどそれはできない 死ぬわけにはいかない 生きろという本能があるだとか そんなことではない 人間は 死に際でなければ …

詩『夜道で襲われたときは冷静に』

どうもやる気が出ない 何もかもがだるい 不安? いや違うな そんなものはとうに捨ててしまった 「やってきたことは全てベストだった」 そう言い切るのは安易だと非難されがちだが そう思うしかない そう思わないと そう信じないと 余計な深みに引きずりこま…

短編小説『チャールズの独り言』

チャールズがフランクフルト空港に着いたのは、朝の六時過ぎだった。そこから一時間ほど電車に揺られてフランクフルト駅にたどり着き、二メートルもあるチャールズよりさらに三メートルほど上にある石造りのアーチ型の庇を見あげながらくぐって、立ち止まっ…

詩『ベットは俺』

スロットを回す 回した瞬間 もう分かってんだ 自分がすっからかんになるって 俺はプロじゃない プロは毎日毎日 朝から晩まで打つ いい台の いい時間帯を見極めるために 来た…… じゃらじゃらと音がする 今のところ勝ってる 勝ってるぞ けど分かってんだ 生涯…

詩『プール』

忘れられなくて辛いことがあるとする でも忘れられないって言っても 辛いって言っても その中で俺はときどき 大いに笑っている 大いに怒っている 大いに楽しんでいる 一番 人生でいっちばん辛いことがいつまでも更新されないから 全く同じことで悩んでんだ …

詩『決めごと』

打ちのめされたとき 打ちのめされた とそのことばかりに目がいって ため息をついて むしゃくしゃして 思い切り叫びたいけれど恥ずかしいから口の中で唸ったりして 叫びたいけれど誰かにきこえたら恥ずかしいからやめておこう という咄嗟の判断をしているうち…

詩『どうもしない』

気分のいいときだったら気にならないような 何かつまらないことが続いて 終わりにしようと思っても 次に考えるのは終わらない理由で じゃあ終わらせたくないかというとそうとも言い切れず さっき自分が本気で終わらせようとしていた記憶はちゃんとある そし…

詩『酔うためのビールに酔えなかったけど』

底が見えたと思って焦って こんなところが自分の底かと悲しくなって もうやめようと思った 今日は眠れないだろうと覚悟して 一人で缶ビールを飲んでみても酔えはせず 酔えないならビールを飲む意味のない私は 酔おうとしたことがあほらしくなって 早い時間に…

詩『皿』

全部洗ったつもりだったのにテーブルの上に一枚残ったお皿 を見て私は 何してんだ めんどくさ もういいや とすぐに洗うことを諦めて 違うことをしようとしたけれど ふと気になってテーブルを振り向き そのお皿が私の中の何かを象徴しているという考えに囚わ…