詩『世界中の金をかき集めることに人生を賭けた男の話』

静かな夜さえあればいいと思うことがある
腹いっぱいメシが食えればいいと思うことがある
一人の女がそばにいてくれればいいと思うことがある
時間を気にせず眠られればいいと思うことがある
金さえあればいいと思うことがある


俺たちはその場その場で色んなものを求め
それが自分の手の内にないことや
手に入れられそうにないことを嘆く


たまに運よく望み通りになったとしても
欲求は留まるところを知らず
よりいっそうの満足を求め
あることに関して一定の満足を得れば
次は無意識のうちに新たな別の欲求を探す
探さなければ欲求はやってこないというのに


一人の男がいた
けど世界は
その一人の男さえ満足にすることができない


一人の男がいた
けど世界は
その一人の男さえ幸せにはできない


幸せらしきものを手に入れたければ
裸でいることだ



寒いな
暑いな
恥ずかしいな
とぼんやり考えながら部屋のどこかにあるはずの服を探すことだ
死ぬまでずっと


その覚悟がおありかな?
俺にはない