2016-01-01から1年間の記事一覧

詩『天気予報』

明日は晴れるのか 雨なのか曇りなのか あるいはひょうが降るのか 次の日曜の天気や気温や湿度 東京タワーの現在の様子 ニューデリーの最高気温 ロンドンではちゃんとしっとりとした雨が降るのか この夏は猛暑なのか平年並みなのか冷夏なのか 中年男の気象予…

詩『犯人は出演者のうちの誰か』

朝もやの中 列に並び 後ろから割り込まれないように注意し 新聞に目を落とし 携帯画面に目を落とし 耳栓代わりのイヤホンはすでに装着済み 列車がホームに入ってくると 微妙にズレたドアの位置に合わせて一歩移動 降りる客優先 俺はドアの右側から 私はドア…

詩『キャッシュ・レジスター』

仕事に精を出し へこへこ媚びへつらい 同僚を出し抜き 有能な部下を利用し 10年かけて たとえ役職についたって キャッシュで家さえ買えないって話をきいたんだが 一体どうなってんだ? 誰もが見えないものに価値を求めすぎているのに それがまかり通っている…

詩『ビール瓶にコインを貯める』

運良く何かしらの仕事にありついたときに 何かしらの気の迷いで 少しだけ頑張ってみようって気が起きて 運良くその仕事の才能が備わっていて いや 才能とまで言えなくとも とにかく人並みか ややそれ以下くらいには適性があって かつ 俺が逃げ出したりしなけ…

詩『一体どうやったら逃れうる?』

俺が生まれて初めてまともな仕事に就いたのは 家賃や光熱費 明日というか今日の食事と酒代 年金と健康保険料 住民税 そんなものたちと それらを支払えなかったときの督促状 催促の電話から逃れたかったからだ 本当にそれだけだ 俺が求めていたのは 平穏だっ…

詩『忘れられるものなら忘れてみろ』

嫌なことを忘れるために酒に頼り いっとき楽しい気分になって ああいい気分だと千鳥足で家に帰ると 自分の家に帰るつもりで家に帰ったのに これが俺の家なのかと初めて知った気持ちになる 俺は灯りをつけ 椅子に腰を下ろし 部屋を見回し 鼻をスンスン鳴らす …