詩『キャッシュ・レジスター』

仕事に精を出し
へこへこ媚びへつらい
同僚を出し抜き
有能な部下を利用し
10年かけて
たとえ役職についたって
キャッシュで家さえ買えないって話をきいたんだが


一体どうなってんだ?


誰もが見えないものに価値を求めすぎているのに
それがまかり通っている


まあ
見えない価値をつけてものを売らなきゃ
自分が買う側になったときに金が足りないもんな


金を出して買ったものに見えない価値を見出ださなきゃ
満足できないもんな


すっごくよく分かるよ
俺だってそれくらい分かるさ


誰もが自分の人生を輝かしいものにするために
見えないものに価値を与えて繕っている
世の中と
自分自身を騙している


誰も本当のことを知らない
知ろうともしない
ときどきふとした瞬間に聖なる心境に包まれて気づくことはあるけど
決して言葉にしない
すぐにまた
俗物へと自ら身を落とす
落とさざるを得ない