詩『かもしれない症候群はビルの屋上に立って何もしないタイプ』

どれだけ自分を作り上げたつもりでいても
確固たる信念を持っていても
次々と現れて俺に襲いかかる不安


もう駄目なのかもしれない
最初から才能なんてなかったのかもしれない
文無しになってホームレスになるかもしれない


かもしれない


可能性に過ぎないのに
まるで決定事項を突きつけられたような気分になる
諦めるための言い訳探し


勘違いしてはいけないのは
どれだけ金を手に入れても
愛を手に入れても
名声を手に入れても
それで不安が尽きるわけじゃないってこと
死後の世界に何も持って行けないことから逆算すると
今がどれだけ良くたってそれは
昼寝をしたときに見る短い夢のようなもんだ


金にならない
褒められない
女にモテない


そんな
自分以外の誰かがいなければ気にならない些細なことで
希望がひっくり返って不安になる
たったそれだけのことだ


俺たちはいつも
喜ぶときだって怒るときだって落ち込むときだって
同じ対象を問題にしている
愛しているから愛されなくなり
金があるから金がなくなり
名声を得るから軽蔑されるようになる
あるものごとに自分がどういう感情を抱くかはたいした問題ではない
感情に左右されて間違ったことを
自分を捨てた行動をしないことだ
俺が俺から離れていきかねない
俺であることを失った俺には
歯車かネジ程度の価値しかない


自分勝手に夢を見るならば
それに伴う不安は一人で抱えなければならない
抱えながら進む
潰せる不安もあれば
潰せない不安もある
いつの間にかなくなっている不安もある
どっちにしたって
次から次へと新しいのがやってくる


おいおいまた来たよと
笑いながら受け止めなければならない
もう抱えきれないぜと
笑いながら何とか抱えなければならない
いつの間にかここまで来ちゃったよと
笑いながら進み続けなければならない


その先に希望があるかって?
そんなこときく奴にはないに決まってるだろ