詩『堕落、食い物、宝くじについて』

部屋には食べ物が何もなかった
どうして何もないんだ?
俺は食べ物が尽きることのない部屋を思い浮かべる
常にその先一週間分の食料を備蓄した部屋
腹が減れば
手を伸ばせば食い物が手に入る部屋
野心をなくし
ぶくぶく太り
髭はぼうぼう
風呂にも入らなくなる
朝から夕方まで寝て
その次の日は昼から夜まで寝る
昼だとか夜だとかどうでもよくなる
まあ目を覚ましたのが夜ならラッキーってことで
それもいいんじゃないかって気がするが
誰もそんな部屋を用意してくれない


堕落してはいけません
できる限りの手を尽くさなくてはなりません
晴耕雨読


底辺に落ちてしまえば
それは努力不足って言われる



名声
どちらかを手に入れれば
よく頑張ったってことになる
知らない奴からだって褒められる
ただし
自らの意志で何週間も飲まず食わずで飢え死にした忍耐は
誰にも褒められない
だいたいの奴が死にたくないって思ってるから
だいたいの奴に馬鹿だって言われる
ところで「だいたいの奴」って誰と誰と誰のことなんだ?


俺はだんだん
どっちでもよくなってきた
富も名声も
手に入るときは入るし
入らないときは入らない
未だ入ったことはないが


人に言われて良い気になる奴もそうだが
人に言われて悪い気になる奴も俺は気に食わない


五億の宝くじを当てて
結局無一文になった奴がいるらしいけど
そいつらは馬鹿って言われるけど
確かに馬鹿なのかもしれないけど
少なくとも奴らは五億を使ったのだ
チャレンジしたのだ
だが彼らも誰にも褒めてはもらえない
五億を使い込んだことも
五億を当てて有頂天になっていたことも
宝くじ売り場に並んだことさえ非難される


堕落したなら
言い換えればつまり……
堕落したってことだ


曲がりなりにも今日まで生きながらえたことを神に感謝し
俺は今日も宝くじを買いに行く