詩『OK、問題ない』

大丈夫、と鏡の自分に言いきかせる

何度も何度も

 

大丈夫なんだろうと思い込んだ俺は

すっきりした気持ちで机に向かう

そして一章を書き終えたあたりで

ふと

いったい何が大丈夫なんだろうと考える

 

 

金を手に入れれば

鏡の中の俺は満足するのか?

それとも女を、車を、家を手に入れれば?

そんなものをもってして

満足するのか?

 

 

大作家になりたい

ちやほやされて

使いきれないほどの金が勝手に入ってきて

腹が減ったときに食い物が自動で運ばれてくるような

ほしいと思ったものがすぐに手に入るような

 

 

しかしそんなものは

ただいっとき気持ちを盛り上げてくれるだけで

作家の実体ではない

儚いエンターテイメント

 

 

俺の強みは

低い位置からの観察を長く続けたことで

それを知っていること

沼にはまった奴らを知っていること

 

 

俺は目を覚ますことを前提として

夢を見ることができる

 

 

コリコリとネジを巻き

さあ夢でも見ますかと目を閉じることができる

 

 

いつか来る本当の朝

俺は手探りでベルを止め

よっこいしょとベッドから起き

机に向かう

物欲も性欲も失い

何もほしくない

とさえ感じなくなったとき

俺は全盛期を迎える