詩『胸』

 

高速を走る車から手を出して

あるいは二の腕の後ろを触って

女の胸の感触だとふざけていた

 

 

触ったことがないから

ふざけることができた

想像し

頭を膨らませた

 

 

しかし一度実物を触ってからというもの

そんなことはしなくなった

ガキっぽいと

過去の自分たちに呆れている

 

 

そしてなぜか

呆れている今の自分のことを悲しく思う

 

 

それは俺が触りたいときに触れる男ではないからであり

一方でそのぬくもりを知っているからだ

 

 

手のひらに女の胸を貼りつけて

いつでも触れるようになったなら

しばらくはぬくぬくと暮らせても

また次を求めるに決まっている

 

 

比喩ではなく

女と一体になれたなら

最後には何を欲するのだろうか

多分

消えたくなっているのだと思う