詩『ビール瓶にコインを貯める』

運良く何かしらの仕事にありついたときに
何かしらの気の迷いで
少しだけ頑張ってみようって気が起きて
運良くその仕事の才能が備わっていて
いや
才能とまで言えなくとも
とにかく人並みか
ややそれ以下くらいには適性があって
かつ
俺が逃げ出したりしなければ
雇い主は俺に給与を支払う


一ヶ月
二ヶ月…
安月給だとしても
この国では
もの乞いみたいなことはしないで生きていける
安い部屋に済み
安いメシを食い
酒くらい飲める


その生活が自分の身体に馴染んでくると
つまり自ら勤勉なワーキングプアに歩み寄ったわけだから
ふと自分の先のなさに気づくことくらいはあっても
飢え死ぬような貧しさに襲われることはないと安心し始める


来月も
再来月も
来年の同じ時期も
自分は生きているだろうというぼんやりした無意識に支えられた安心感


今日の寝床や食い物の心配をしなくなった俺たちは
次に余った金で何かを手に入れようとする
テレビや
時計や
新しいシャツや
挙げ句の果てには
ローンを組んで車や家を買おうとする


俺はそんな奴らをごまんと見てきたが
その度に
前回と同じかそれ以上にびっくりして
けどすぐ忘れて冷たいビールが待つ汚いバーに向かう