詩『あれもこれも』

ハンバーガーが食べたい
ビールが飲みたい
海に行きたい
セックスがしたい


なんてことは
すぐ言えるのに
言ったそばから叶えることができるのに


幸せにしてやりたいと思えなくなった
とあなたが言ったとき
じゃあ私は私で幸せになる
と言った私はどうやって幸せになるつもりだったのだろう


ハンバーガーを食べて
ビールを飲んで
海に行って
セックスをして


したいことはそれくらいなのに
全部叶えた私は幸せではなく


なんのためらいもなく通り過ぎた
昔のハンバーガーやビールや海やセックスを
あとから大切に思い


けれどあとから大切に思っても
ハンバーガーは二分で食べちゃったし
ビールを飲みながら馬鹿面だったし
海では特に何もしなかったし
セックスはこれが永遠に続くものと思っていた
まして
今の私の何かが変わるわけでもあるまいし


もっと
ひとつひとつを大切にしていれば
何か変わったのかしら


ハンバーガーが食べたい
ビールが飲みたい
海に行きたい
セックスをしたい


そんな小さな欲望を毎日生んで
馬鹿みたいに真面目に消化していく


繰り返しの末にしか
積み重ねの末にしか
幸せとは訪れないのであれば
そんな勝負
こっちから願い下げ
くそ
くらえ