詩『誰かの人生』

不平不満をこぼしてばかり
そんな私を見かねたあなたは
じゃあ生まれてからの理想の人生を書いてみなよ
と言う


机の上に差し出された
まっしろの紙と
削りたての鉛筆


私は書いた
こうだったら良かったのに
こうだったら幸せだったのに


削りたての鉛筆は
身を削りながら
それでもすらすら動いた


書きあげた人生を
あなたは指でつまんで掲げて眺め
黙って読んで
読み終えてからもしばらく黙って
これ誰の人生?
と不思議そうな顔をして言う


この人は馬鹿なのかしらと
私は答えかけてから


その言葉を飲みこんで


知らない人の


と笑って言った