詩『カン、クル、スン。』

カンカンとアパートの階段をあがり
隣の家からシチューのいいにおいがして
クルクル回る換気扇の前で立ち止まった私は
いいなあ
といいにおいなのに寂しく思う


ポーンと鞄をベッドに投げて
そのベッドに倒れこもうとしたら鞄が邪魔で
嫌になる


それでも鞄を避けて倒れこみ
しばらくじっとしていたけれど
減ったお腹にイライラしてきて
昨日の残りで野菜炒め


今週何度目野菜炒め
フライパンを動かしながら
お腹はグルグル鳴ってるのにさ
おいしそうに思うのにさ
自分が野菜炒めに飽きた気がして
何だか食べたくなくなっちゃう


ピンポーン
という音で私は
ハイハイとドアを開け
よう
と言ったあなたに
どしたの急に
とびっくりきく


あなたはそれには答えずに
「いいにおいだな」
と言って鼻をスンスン鳴らす


ああ私が飽きた野菜炒めも
ちゃんといいにおいしてたんだ


「でしょ?」
と言って私もスンスンしてみる