詩『手』

「失った」と思ったけど
「失った」ってそもそもなんて傲慢な言葉


飲みこんで消化したわけでもないのに
それが自分のものになったと思う人の傲慢な言葉


手に入れるという言葉に
自分の手で
五本の指を使って
ものを掴む以外に意味があるなんて
私は信じない


ただ横を通っただけの
近くを通っただけの
それだけのくせして手に入れたなどと
勘違いも甚だしい


服も
人も
お金も
時間も
私の横をただ通る


たまたま服がすっぽり入ったり
たまたま人と会ったり
たまたまお金が振り込まれたり
たまたま時間を短く感じたり
私はただ突っ立って
服を着せられ
人と会わされ
お金を持たされ
時間を使わされ
全部誰かに筒抜けで


孫悟空みたい


お釈迦様の手のひら
それが世界の全てだとしても
裸の私は一人
何かが起きるのを待っている