詩『パンチドランカー』

名文と呼ばれる文章を読んで形だけ真似する奴は

死ぬその直前になっても

骨粗鬆症のような文章しか書けない

 

 

シャツやパンツ

靴下を透かして

空気を感じ

地面を踏みしめる

息遣いに耳を澄ませる

リラックスして

ベルトを引き裂く素早さで腰を回転させ

袖口のボタンが飛び散る捻りを加えたパンチを出す

 

 

作家は裸でなければならない

筋骨隆々も善し

貧相でも善し

太っていても結構

鏡の前でファイティングポーズをとり

そいつに打ち勝てるのであれば

燃えカスになる覚悟を持つのであれば

 

 

渾身の一撃の結果

避けられることもあるだろう

効かないこともあるだろう

カウンターを喰らうこともあるだろう

嘲笑を浴びることもあるだろう

ほとんどがそうだ

 

 

ああ駄目だった

ハハハ、まあそりゃそうだろう

そう笑ってリングから降りたって構わない

ここで勝たなくたって

人生が終わるわけじゃない

 

 

一方で立ち続ける人間もいる

ここに留まりたいのか

単に他に行くあてがないのか

そんなことは大した違いではない

 

 

なぜここに立っているのか

自分がどんな姿でいるのか

分からなくなっても

相手だけを見据えて

パンチを繰り出すのだ

繰り出すしかない

 

 

闘う意味を忘れたパンチドランカーには

勝利を告げるレフェリーの声もきこえない