詩『風邪は治りかけが一番危ない』

 

 

こじらせた風邪が治りかけ
ベッドの中の居心地の良さを一週間ぶりに思い出した夜
肺炎を起こして独りぼっちで死ぬのではなく
再び社会に立ち向かいつつある自分を意識する

 

過激な敵対心ではなく
また頑張れる
という「やる気」とも呼べる気持ち

 

願っているのに叶っていないもの
二度と帰ってこないもの
そういったものが俺の「やる気」と共に再び形を持ち始める

 

目の前はぎゅうぎゅう詰め
風邪からの復活を遂げようとしている俺は
その隙間にそっと身体を挿し入れる
隙間の形に身をよじって存在するしかない

 

ずっと風邪をひいていた方が良かったんじゃないか?
食欲を落とし震えていた間は
元気になりたいなあ
なんて考えて満足していた
風邪を治すことが俺の目標であるとさえ思った

 

風邪を引いた気分で生きてみようか
ただ生きることを目標にして
そのためなら地獄の風呂さえ飲み干してみせるという覚悟
命を落としても
精一杯やったと言い訳できる生き方
幸せだったと死に際に口にしても笑われない生き方

 

いや待てよ
一体誰が笑うというのだ
声をきくのは一人で十分だ
たとえその一人が
俺自身だったとしても