詩『途中経過はいいから完璧になったら起こしてくれ』

何かそこらへんの仕事に就いて
慣れ
上手くなり
安定し
わずらわしい考え事をしなくなり
仕事という一点のみでの信頼を得
誰かが整備したレールの上を進まされていることさえ忘れていた自分に気づいたとき
または忘れていなくともそういう生活もいいかなと思い始めたとき


俺は怖くなる


公共料金
ネムー
手数料
マイホームローン
市民税
エチケットとしてのハンカチ
テレビ
二枚目の皿
月に一度の散髪
ポイントカード


何も考えずに受け入れて
体のあちこちを日常的にかじられすぎて
今回だけだぞと許しても
今回だけで終わるはずもなく
そのうち何も感じなくなる
何も言わず
されるがまま
あるいは自ら差し出す


脅えた俺は
明日が来ることさえも信用しない
今が夜なら
夜は続くと考える
そう考えることで何とか自分を保つのだ


部屋で一人
窓枠をしっかりと掴み
小さな窓から
暗い空を見張っている


空が白みを帯び
明日ってやつが太陽と共に来るのを見届ける


ああ、明日だ


俺は安心して
どっと押し寄せた疲労感に従い
ベッドに潜り込んで目を閉じる
明日は来たのだ
なんだやっぱり来たのだ
俺は間違っていなかった
はっはっは……
そして気づく
こんなことやってちゃ時間がいくらあっても足りないな


消えゆく意識の中、俺は考える
次に目を覚ました瞬間から
俺はまた世の中のあらゆるものを信じ始めるのだろう
時計を信じ
バスの時刻表を信じ
踏切を信じ
人を信じ
嘘をつくんだろう
自分だけは騙せているつもりになって
全部知っているような顔をして


いつか全ての真実が明らかになるなら早くしてほしいもんだ
ただしそれは百パーセント真実でなければ意味がない
百パーセントだ……


じゃあな
俺は寝るからな
今度こそ寝るからな
おやすみ