詩『百円玉で笑顔を買う』

 

手を取ると握り返してくる

微笑むと微笑み返してくる

ゼリーをスプーンで口へ運ぶと

雛鳥のように口を開けて

いくらでも食べる

私の大切な人

 

百貨店の屋上にあった

バスや電車、飛行機の乗り物

運転席で満足げな笑みを浮かべる小さな私

パンダやライオンの乗り物

背中に跨り勇敢な気持ちになる小さな私

そんな写真が残っている

だが

その乗り物に

あなたが百円玉を入れる姿

私に手を振る姿

そんな写真は残っていない

私は世界の王様だった

 

私だって

あなたより先に生まれて

百円玉で

あなたを楽しませたかった

今や百万円あったって

あなたを楽しませることはできない

 

いや百円玉なんてなくなって

あなたを楽しませることはできる

私が微笑むと

あなたも微笑むのだ

でもそこに

きっと私は

悲しさを見つけてしまうのだ

 

やはり私は

百円玉を機械に入れて

あなたを楽しませたかった