短編小説『告白は秘密基地にて』

 平日の昼過ぎに目を覚ましても慌てることなく、隣で寝息を立てる裸の女を眺めていられる。こんな生活ができるなんて、こうなるまで考えもしなかった。

 たいていの女は、身体を横に向けて小さく丸まる。仰向けだったとしても、口を大きく開けて、目を半開きにさせている。それはそれで、愛していたと思うのだが。

 ミサは仰向けで、四肢をあるべき場所に置き、顎をほんの少し突き出して目と口をきちんと閉じ、ほとんど一晩中その姿勢でいる。窓の外から射し込む光と、部屋の奥の薄暗さで描かれる影には、明け方の湖のほとりのような神聖さがある。胸は天井に吸い上げられたようにピンと張り、みぞおちからは三角州のようなくぼみがなだらかに広がっている。腰にかけて横幅が広くなり、その先は――。

 掛け布団をめくり、テントのようにして中を覗く。陽の光が透ける、卑猥な空間。ミサは股の毛が薄く、そのことを気にしている。明るいところで見られるのを嫌がる。今は、ミサも見ていないものを、俺だけが見ている。俺だけのもの。掛け布団が擦れ、ミサの左脚が動く、一度膝を立て、また伸びる。

 俺は、手を伸ばして毛の先に触れてみる。思っていたより硬い。昨晩は、そうは感じなかった。股の毛の存在なんて、気にしていなかった。一生懸命だったんだ、俺も、ミサも。

 ふとももに、指先を置いてみる。指を二本、三本と増やしてみる。手のひらで撫でてみる。すべすべしている。俺の毛むくじゃらの脚とはえらい違いだ。男に生まれて良かったんだろうな、俺は。

 良かったよな? こうしてお前といられるわけだし。な?