詩『求職中』


誰か俺の仕事を探してきてくれないか
俺にぴったりの仕事を探してきてくれないか


俺の長所は
読み書きそろばんができて
何でもおいしく食べて
どこでも眠れる
この三点


俺の短所は
俺の短所はってえと
ただ一つ
たった一つ
まぎれもない一つ
やる気がないってことだけだ


誰か俺の仕事を探してきてくれないか
一生食うのに困らない仕事を
と言っても
年一千万出せってわけじゃない
出してくれるならそれはもらうが


俺にぴったりの仕事を探してきてくれないか
俺の能力を生かせる
俺の能力分ぴったりの
退屈もしなければ忙しくもない仕事


業種は問わない
あんたが開拓した業種だって構わない
多少の汚れ役だって構わない
法に触れない程度のあくどさがあってもいい


誰か俺の仕事を探してきてくれないか
もし
万が一そんなものを見つけたなら
俺の部屋に来てくれ
ドアをノックして
まあ呼び鈴を鳴らしてくれてもいいが
待ってましたとドアを開けるから
俺にぴったりの仕事ってやつを持ってきてくれ


コーヒーくらい出すさ
しっかりと話をききたいからな
砂糖とミルクもつけよう
好きなように調整したコーヒーを飲んだら
あんたはその仕事の魅力を言葉巧みに披露してくれ
少しくらい嘘を混ぜたっていい
どっちにしたって
完璧に何かを伝えることなどできない


それでもあんたは語ってくれ
どれだけ素晴らしい仕事かということを
どんなところが俺に合っているかということを
給料はいくらで
福利厚生はどうなっているか
休みは年に何回あり
有給休暇はきちんと消化させてくれるのか
勤続十年でどれほどの昇給が見込めるか
定年後の暮らしはどうなるのか


あんたが喋り終わるまで
俺は黙ってきいている
頷きながら
相槌を打ちながら
メモを取りながら一語一句ききのがさない集中力で
全てを語りつくしたのを見届けて
俺は
ペンを転がして言う
「おとといきやがれ」


誰か俺の仕事を探してきてくれないか
俺にぴったりの…