人類はいずれ絶滅するということが
ある者の心を脅かすことはない
ある者に脅しをかけるのは
金の不足や死や病気や孤独
しかしその個人の不安は
まるで人類の危機のように語られる
一人の不幸を
人類の不幸と考える
不安が不安を呼び
世界経済の心配をしたりする
自然を守らなくてはなどと言う
核ミサイルや抑止力の話をする
こわいと口にしながらも
本当に恐れてはいない
そうやって独りごちているうちに
人生は何の問題もなく終わるだろうと考えている
近所にあるスーパーがつぶれないこと
たまに癒されるためのちょっとした緑が残ること
向こうから歩いてくる男がいきなり襲ってきたりしないこと
そればかりを日々願っているのに
人はまた今日もニュースを漁り
人類が絶滅しない方法を探すフリをしている